火野葦平「魔の河」『火野葦平兵隊小説文庫 8』光人社、1980年。

上野英信天皇陛下万歳』から、とりあえずここにたどり着きました。

小説の舞台設定は、1932年の九州・若松と、上海。発表年は1957年。

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こういう動乱のなかで、中国人苦力がストライキをしたため、石炭荷役がとまってしまった。花野丸が上海に急行するのは、その荷役をするためである。花野丸が御用船となったのであるから、仲仕たちもいわば出征といってよかった。送る者も、送られる者も、悲壮な顔をしていた。すでに、若松からは満州と上海とを通じて、十四、五人近い戦死者を出しており、それらの遺族たちはすすんで埠頭にあらわれた。ちぎれんばかりに紙の日の丸をふりながら、仇をとってきてちょうだいね、などと、涙声で絶叫する女もあった。p.6

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小説の舞台設定である、1930年代ころは、カナダやアメリカでも、日本人労働者=ストやぶり、という言われ方があったよな。