香港学会の続き

昨日書いたIsabella Bird関係のセッションについて、つづき。

日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)

日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)

あ、イザベラ・バードについては、ほんとにいろいろ出てるんだ。不勉強でした。その不勉強はこれからまた追いつく努力をすることにして。
香港学会のイザベラ・バード関係のセッションでは、いくつかの論議の軸があったのだけど、
1 「単なる」女性旅行者として「極東」を訪れた、すでにブリテンにおいて文名のあった、上流夫人イザベラ・バードと、当時のマラヤの、(たぶん)下級官吏の妻として当地に居住していたEmily Innesとの、対比の問題。「大英帝国」系の「女性」のあいだにも、階級やロケーションといった差異があることをどう考えるか、ということ。

The Chersonese with the Gilding Off (Oxford in Asia Paperbacks)

The Chersonese with the Gilding Off (Oxford in Asia Paperbacks)

2 本当に不勉強で、バードが日本紀行した直後に、当時のマラヤにもいっていて、そこでも「土着民」村ツアーをやっていたらしいことを、知りませんでした。Shizenさんの発表は、バードの日本紀行記録に二種類があって、ひとつは紀行全体についての総録、ひとつはその抄録で、北海道へのツアーを中心に扱い、実際にはいっていた京都などへのツアーについては省略してある、この編纂の政治学を問うもの。

えと、いろいろ考えたけれど、とりあえず、この系統と関係あるかな、という「人種の展示」系についての資料をメモしておく。

Michell, Timothy. "Orientalism and the Exhibitionary Order." Nicholas B. Birks (ed), Colonialism and Culture. Ann Arbor. The U. of Michigan Press, 1992. 289-317.

Christ, Carol Ann Christ. ""The Sole Guardians of the Art Inheritance of Asia": Japan and China of the 1904 St. Louis World's Fair." positions 8:3, 2000 by Duke University Press.

第二回オリンピックで、さまざまな「先住民」がその運動能力をテストされて、というはなしの資料が、今は出てこない。また探して書こう。

今日昨日あたり、別系統でやっていたこと。
ボローニャ出身のStellaが、ボローニャというとパスタと思うだろうけど、そんなにパスタは食べないのよ、てな話の続きから、映画Lost in Translationの話になった。

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

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これは、香港の学会で、Steveがネタにしていたもののひとつ。Stellaから、Lost in Translationどう思った?と聞かれて、香港の学会のことが頭にあったものだから、つい、「頭来た!」と答えた。最初Stellaはよくわからなかったらしく、どうして?と聞かれた。あまりにもステレオタイプ的だから。Stella、ああ、イタリアといえばマフィア、とかいわれて頭に来るのと同じね。

英語の、とくに理論系のものを読む気にぜんっぜんなれないので、日本語のものを読んでいた。

血と骨〈上〉 (幻冬舎文庫)

血と骨〈上〉 (幻冬舎文庫)

上巻のみ、手元にあったので。植民地状況下での「父」の主題。あれ、これって、漫画版もでてるんだ。
血と骨(2) (バーズコミックス・スペシャル)

血と骨(2) (バーズコミックス・スペシャル)

半島を出よ (上)

半島を出よ (上)

これも、上巻のみ、手元にあったので読んだ。場所が百道で、めちゃ地理感あり。なんだかなー、「男」な世界だなぁ。

Gotanda, Philip Kan. "White Manifesto and Other Perfumed Tales of Self-Entitlement, or, Got Rice?" in No more Cherry Blossoms: Sisters Matsumoto and other plays. Seattle and London: U. of Washington Press, 1994.

No More Cherry Blossoms: Sisters Matsumoto and Other Plays

No More Cherry Blossoms: Sisters Matsumoto and Other Plays

ポストーM.Butterflyとして、授業のネタに使える可能性強。コーカソイドアメリカ男性が、アジア系(この場合、主にアジア系アメリカ人を指すーー留学生などの一時的滞在者ではなくて)の女の子をたらす場合のハウトゥーが、戯画的に。「超一流」にのしあがっているアジア系アメリカ人男性が、「B級」のコーカソイドアメリカ人女性とくっついてしまうのはなぜか、とか。
この作品のほかに、"Ballad of Yachiyo"も、今日読了。これには、ハワイの日系人社会(20世紀初頭)における沖縄出身者に対する差別などの問題も織り込んである。
同じくGotandaだったと思うのだけど、「遠隔地ナショナリズム」において、「本土」における差別構造が拡大再生産されてしまう問題を扱った戯曲もあったな。チェックすること。
Gotandaのは、Yankee Gawk(?)もおもしろかった。第二次大戦中の日系アメリカ人に対する迫害を逃れるため、中国系になりすましていた中年日系アメリカ俳優と、そのつぎの、identity politicsずぶずぶの日系アメリカ俳優のはなし。後者が、アメリカ演劇世界でのしあがるために、『マクベス』の主役をゲットしようとするはなしとか。

時差ぼけぼけを解消するため、明日は掃除洗濯しよう。